ポイント消化率80%が生んだ客単価120%──ミューコンタクト、会員プログラムを軸にした施策とは

ポイント消化率80%が生んだ客単価120%──ミューコンタクト、会員プログラムを軸にした施策とは

毎月7のつく日はポイント2倍、ランクアップすれば還元率が跳ね上がる――カラコン専門EC「ミューコンタクト」は、自由度の高いポイントプログラムを軸にリピート率と客単価を同時に伸ばし、少人数運営でも前年超えの成長曲線を描いています。消費財ビジネスにおける“常連化”をどのように実現したのでしょうか。二度のサイト刷新、そして会員プログラム戦略の裏側を、篠池さんと福田さんにお伺いしました。

インタビュイー紹介とサイトリニューアルの背景

篠池:私は2013年、フリュー株式会社のカラコン事業部で“ECもカラーコンタクトも未経験”というゼロベースから、カラーコンタクトEC「ミューコンタクト(mew contact)」を立ち上げました。2025年4月1日からは事業譲渡により運営母体が株式会社カラコンワークスへと移りましたが、私と福田、そしてデザイナーがフリュー時代からそのまま移籍しているため、ブランドコンセプトもそのままに、運営移行できました。

直近のフリュー時代は、組織が大きくなっていたので主にマネジメント業務を担っていましたが、今は全体管理に加えてお客さま対応やマニュアル構築など、立ち上げ当初の“現場感覚”を取り戻すような動きも並行して行っています。

株式会社シンシア EC事業部 部長 篠池さま

福田:もともとはECのほうではなく、オリジナルカラーコンタクトブランドのレンズデザイン、モデル選定、コンセプト策定など、商品企画を幅広く担当していました。ただ、数年前にEC-CUBEからShopifyへ移行した際、Shopifyならではの機能を活かしきれないサイトになってしまったんです。

そこで「もう一度きちんとリニューアルしよう」という方針を決定しました。ECサイトの企画も担当することになり、現在はUI/UXやトンマナの再設計に着手しつつ、導入済みツールの徹底活用や販促企画も私がハンドリングしています。

株式会社シンシア EC事業部 福田さま

短期間で二度のリニューアルに踏み切った理由を教えてください。

篠池:最初のリプレイス後、サイトは「買い物だけができる場」にとどまっていました。しかし私たちは、買い物そのものをエンターテイメントにしたいと考えています。お気に入りのカラコンに出会い、そのプロセス自体を楽しめる空間を提供したい。EC‐CUBE時代は細部まで作り込んでいましたが、移行時には要件を詰めきれず、思うような体験を実装できませんでした。

一方で、Shopifyのポテンシャルが大きいことは分かっていたので、「Shopifyの強み」と「ミューコンタクトが提供したい体験」を改めて整理し直し、再リニューアルに踏み切りました。

30年を支える会員プログラム制度ー還元率が育てる顧客ロイヤルティ

篠池「お客さまがミューコンタクトでの買い物を“最もお得”に感じられるように」―そんな発想から会員プログラムを導入しました。自社開発の〈ルミアコンフォート〉などは公式サイトで購入いただくのが一番お得ですが、仕入れ商品は他の販売店でも手に入ります。だからこそ、継続的に当サイトを選んでいただく理由が必要でした。

現場チームが「購入ごとにポイントが貯まり、還元率が上がる仕組み」を提案してくれたことが、プログラム検討の契機です。

会員ランクについて

福田:私たちはユーザーインタビューを定期的に行っています。その中で分かったのは、ナチュラルカラコンは“毎日使うファンデーション”のような存在だということです。気に入ったデザインを見つけると、その瞳が本人のデフォルトになる―そう語るユーザーも少なくありません。

また、カラコンデビューは10代が多く、40代まで使用される方も多くいる。約30年もの長いライフサイクルを持つ商材だからこそ、購入するたびにお得度が高まる仕組みはユーザーにもメリットが大きい。結果的に「ミューコンタクトを選び続ける理由」になると考えました。

篠池:プログラム基盤にはStack社の「VIP-会員プログラム」を採用しています。2度目のリニューアルを支援いただいたStoreHeroさんの紹介で知り、複数サービスを比較検討した結果、ポイント付与だけでなく“リワードプレゼント”など拡張性の高い機能を備えている点を評価しました。

導入は想像以上にスムーズ。高機能ゆえ時間を要すると思っていましたが、こちらの要件を伝えると迅速に実装していただき、短期間でローンチできました。

“7の日”などユニークなキャンペーンがNPS・単価を向上

福田:「VIP-会員プログラム」を導入して実感するのは、“自由度の高さ”です。複数のキャンペーンを並行で回せるため、常に新鮮な施策を打ち出せる。結果として“ポイントが貯まりやすいサイト体験”を実現できています。
 購入後に実施しているNPSアンケートでも、10点満点を付けてくださるお客さまの理由の中に「ポイントが貯まりやすいから」という声が目に見えて増えました。
以前は“価格”や“発送スピード”など、他社と横並びになりがちな要素が支持理由の中心でしたが、ポイント2倍キャンペーンやランクアップしやすさといった独自施策が差別化要素として機能していると感じます。

篠池: 実際、ポイント付与を受けたユーザーの約80%がポイントを消化しています。Stack社によれば一般平均は60%台後半とのことで、ミューコンタクトは使用率が高いと伺っています。
消費財でリピート購入が前提の商品特性に加え、ポイント関連施策を数多く展開しているため、日常的に“ポイント意識”を高めていることが奏功しているのでしょう。

福田毎月 7 の付く日はポイント 2 倍デーを実施していますが、売上が明確に上がりますし、お客さまが能動的にサイトを訪れてくれるようになった実感があります。さらに、会員ランクアップチャンスキャンペーンでは一時的にランク基準を下げることで購入の背中を押し、友達紹介キャンペーンでは周りの方を紹介していただくことでお得になる導線を用意しました。こうした多角的な切り口でユニークな取り組みができていると思います。

篠池:以前は LINE などで継続的にプッシュ通知を送り、ブランド側が集客をし続ける必要がありました。しかし「7 の付く日はお得」という認知が広がれば、オーガニックの流入が自然と増加します。楽天市場で「5 の付く日はポイントが貯まりやすい」と知られているのと同じ仕組みを、自社 EC でも実現できている感覚ですね。

7のつく日はポイント2倍

福田:キャンペーン時にまとめ買いが増えたのも大きな成果です。送料は無料にしているため、一度にまとめてご注文いただけると出荷にかかる手数料や送料負担を抑えられ、利益に直結します。導入前より平均注文単価は 10〜20%アップしており、数字にもはっきり表れています。

篠池:ミューコンタクトはリピーターに支えられているECサイトです。ポイントプログラム導入をきっかけに数字面も向上し、お客さまにも喜んでいただいています。両者にとってWin-Winの取り組みになっているので、今後さらにブラッシュアップしていきたいですね。

F2転換率+4%を実現した会員ランクアップチャンスキャンペーンの威力

福田:さまざまな施策の中でも、「会員ランクアップチャンスキャンペーン」はとりわけ大きな成果を上げました。EC事業者なら誰しも注目するF2転換率を着実に伸ばした施策です。

通常は「1年間で2回以上・合計5,000円以上」の購入で、レギュラー会員からシルバー会員へランクアップします。5,000円というラインは、カラコン3箱で“届くか届かないか”の絶妙な設定です。そこで昨年末、条件を「2回以上・合計3,000円以上」まで緩和するキャンペーンを約1か月間実施しました。3,000円でも2箱で基準に達するため、クリスマス〜正月シーズンに合わせて“まとめ買い需要”を取り込めると判断したからです。

その結果、前年同時期比でF2転換率は約4ポイント向上。年末は毎年多彩な企画を走らせていますが、明確に数字が動いた施策として自信を持っておすすめできます。

ミッションクリアでランクアップキャンペーンを実施

篠池:ただし、「お得感」だけを追求する施策には注意が必要だと感じています。ポイントプログラム導入前、カラコンに関するエピソードを投稿していただく代わりに“無料のお試し品”を配布したことがありました。SNS で話題になり、反響自体は非常に大きかったものの、販促費ばかりがかかって売上にはつながらなかったのです。

その経験を踏まえ、同様の取り組みを行う場合は“無料”ではなく有料(ただし通常より割安)に設定しています。たとえば「500円クーポンでお試し購入できる」といった形ですね。無料配布と比べて数字面の改善がはっきり表れましたし、この学びは現在の会員プログラムでも活きています。

EC運営+販促企画の二刀流だからこそ描ける次のアップデート

ー 今後の展望を教えてください

篠池:今後もユニークな施策を増やしていきたいと考えています。たとえば、ログインボーナスが増える期間限定イベントなど、ECサイトへのタッチポイントを増やすことでユーザーがサイトを訪問しやすくなる仕組みを検討中です。そうなると Stack 社が提供しているAppifyを活用したアプリ運用も視野に入りますし、お客さまがより使いやすく、よりお得に商品を購入できる土台を整えていきたいですね。

カラコンは比較されやすい商材なので、オリジナルカラコンブランドも強化しつつ、ミューコンタクトならではの強みをもっと活かしたいと考えています。現在のミューコンタクトは、商品を作り、EC運営もしつつ販促やキャンペーン企画まで一貫してできる体制になっています。この 商品企画から販売までを一貫して対応できる人材はとても貴重です。

最近では、おすすめのカラコンを提案する AI チャットを企画・立ち上げました。長期的にお付き合いいただくうえで、お客さまが“安心・安全に、そして楽しく”買い物できるような企画をさらに増やしていきます。

福田:以前は商品企画を担当していましたが、お客さまと直接接点を持つ機会は多くありませんでした。EC を運営するようになってからは、お客さまに直接ご案内でき、コミュニケーションも取れ、結果が数字に返ってくる―その距離感がとてもいいなと感じています。

初めてカラコンを試すときや新しい商品に挑戦するとき、コスメのように「美容部員さんに相談したい」というニーズは常にあります。また、カラコンは長い方だと 30 年以上使い続けるアイテムです。ミューコンタクトのサイトが、お客さまにとって身近な美容部員のような存在になれれば、より継続的な関係が築けるはずです。

機械的ではなく、お客さまを第一に考えるスタッフが裏側にいることが伝わるよう、これからもサービスをブラッシュアップしていきたいと思います。

編集後記

ミューコンタクトでの買い物は絶対に楽しい。率直に感じたインタビューでした。常に飽きさせないキャンペーンを開催しているため、ポイントが貯まりやすく、新しい商品を試すこともできるようにもなる。毎日1回、ミューコンタクトにログインをしてみようと思わせる取り組みです。ユーザー目線でも非常に魅力的な企画となっており、リピート率や単価に結果が表れています。すでに会員プログラムを導入している事業者はもちろん、これから取り組もうと考えている方も参考にしていただきたい事例です。

多くの施策数を並行して動かしている篠池さん・福田さんの顧客解像度も高く、ユーザーヒアリングなど今まで積み重ねてきたものが今のミューコンタクトを支えているのだと感じました。

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