Shopifyレポート×Sidekickで始める自社EC分析(入門編)

Shopifyレポート×Sidekickで始める自社EC分析(入門編)

自社ECの数字を見るとき、普段どのツールを開いていますか? GA4、スプレッドシート、あるいはBIツールなど、Shopifyでストアを運営していても、分析は外部ツールでやるものだという前提を持っている方は少なくありません。あるいは、Shopifyのレポートを開いてはいるものの、数字を眺めて閉じるだけになっている方もいるかもしれません。

実はここ数年のShopifyのアップデートにより、売上に関わる基本的な分析の多くは、Shopify管理画面の中で完結できるようになりました。しかも、ダッシュボードを見るだけで終わりません。疑問が浮かんだその場で問いを立て、原因を確かめ、施策につなげるところまでをShopify上で進められます。

分析がその場で完結すると、手間が減るだけでなく意思決定の質が変わります。日々の判断は、手元にあるデータの質だけでなく、データにたどり着くまでのスピードに大きく左右されるからです。

本記事は2回に分けてお届けします。今回の入門編では、まずShopifyのストア分析で今なにができるのかを整理し、次に、その機能を毎日どう使うかを2つの視点で示したうえで、実践の手順に落とします。いずれも、管理画面だけで始められる範囲に絞りました。

Shopifyストア分析の現在地

Shopifyのストア分析(アナリティクス)は、2024年10月の刷新を境に大きく変わりました。現在の姿を、Sidekick、レポートの組み方、データの所在の3点から整理します。

Sidekickに「聞く」という分析

最も大きな変化は、ShopifyのAIアシスタント「Sidekick」の強化です。レポート画面から新しいレポートの作成画面(データエクスプロレーション。詳しくは次節)を開き、「先月、最もコンバージョン率が高かった流入元は?」と日本語で入力すれば、Sidekickが該当するクエリ(ShopifyQL。Shopifyの分析専用データ抽出言語)を生成し、レポートとして返してくれます。会話の文脈を保持したまま「では商品カテゴリ別ではどうか」と追い質問を重ねて、掘り下げを続けることもできます。

これにより、ShopifyQLを一から記述する負担が大きく減り、クエリを書ける専任者がいなくても分析を始められます(生成されたレポートの指標・期間・絞り込み条件が意図どおりかの確認は必要です)。疑問が浮かんだ瞬間に問いを立てる使い方を、担当者のスキルに依存しにくい形で始められるようになりました。

なお、Sidekickは追加料金なしですべてのShopifyプランに含まれています(利用できる機能や回数の上限はプランによって異なります)。

まずは、次の一文をSidekickに投げてみてください。

昨日の売上を先週の同じ曜日と比べて、変動が大きい商品タイプを教えて

毎日同じ指示を呼び出せるように保存しておく「スキル」の使い方は、応用編で紹介します。

参照:
SidekickでShopifyQLクエリを生成する(Shopifyヘルプセンター)
Sidekick(Shopifyヘルプセンター)

自分の問いにあわせてレポートを組む

Sidekickが返すレポートの土台になっているのが、刷新されたレポート機能です。現在のShopifyレポートでは、指標(メトリクス)とディメンション(チャネル別・商品別といった、データを分ける切り口)を目的に応じて組み合わせ、フィルターで絞り込み、折れ線・棒グラフ・テーブル・ヒストグラム・散布図など複数の形式で可視化できます(指標とディメンションの組み合わせには一部制約があります)。期間比較や比較対象の変更も、その場で切り替えられる設計です。

たとえば、次の2つは数クリックで組めます。

  • 総売上 × 販売チャネル × 商品:オンラインストア、POS、Shopアプリなど、チャネルごとに売上上位の商品を並べたものです。「店頭ではAが売れるのに、オンラインではBが強い」といったチャネル単位の売れ筋の違いが見え、チャネル別の在庫配分や訴求する商品の判断に使えます。
  • 注文数 × 商品タイプ × 新規/リピーター × 1時間:セール開始直後の山を作ったのが新規顧客かリピーターか、どの商品タイプか、ピークが何時に来たかを確かめる例です。あわせて同じ期間のセッション × 参照元チャネル × 1時間を並べれば、その山をどの経路(メール、SNS、広告)の流入が作ったかまで追えます。

ゼロから独自のカスタムレポート(データエクスプロレーション)を作成する機能も、現在はすべてのShopifyプランで利用できるようになりました。かつては指標と切り口を自由に組めるカスタムレポートを使えるプランが限られていましたが、いまは規模を問わず、自分の問いに合わせてレポートを組めます。

レポートの利用方法は、Shopify公式が提供している動画が参考になります (日本語は自動翻訳で提供) 。

参照:
新しいデータエクスプロレーションを作成する(Shopifyヘルプセンター)
新しいShopifyレポートの概要(Shopifyヘルプセンター)
レガシーのストア分析データにおける不一致への対応(Shopifyヘルプセンター)

「ツールをまたがない」ことの価値

もう1つ、Shopifyで分析が完結することの最大の価値はデータの所在にあります。注文・顧客・商品・在庫などの主要データが、最初から同じ基盤の上にあるからです。そのため、外部BIツールを使う場合に必要となるデータ連携の構築、指標定義のすり合わせ、数字の突合といった作業を大幅に減らせます。ただし、外部の広告データや他の分析ツールと数字を比較する場合は、接続条件や指標定義の確認が引き続き必要です。

分析のリードタイムを削るうえで最も大きいのは、この前処理がほぼ不要になることです。

EC分析に必要な2つの視点

ここまで見たように、Sidekickに聞く、レポートを組む、同じ基盤で完結させる、という道具は揃っています。ただ、道具が揃っただけでは、眺めて閉じるだけの状態に戻りがちです。毎日なにを見て、なにに気づくべきかの型が要ります。EC運営における分析要件を次の2つに整理します。

  1. 日次の定点観測:決まった指標を毎日同じ視点で追う土台(ダッシュボードなど)
  2. その場での掘り下げ:違和感が出た瞬間に、すぐ問いを立てて検証できること

1つめの定点観測は、売上・セッション・コンバージョン率・客単価といったあらかじめ想定した問いへの答え合わせです。

対して2つめの掘り下げの対象は、固定されたダッシュボードではなかなか見えにくい変化です。気づくきっかけの多くは、数字への漠然とした違和感から生まれます。

  • 全体売上は横ばいだが、特定チャネルの売上が数週間かけて少しずつ減っている
  • 主力カテゴリの新規購入が減り、リピーターの買い増しがそれを覆い隠している
  • 特定のランディングページだけ、コンバージョン率が明らかに崩れている

違和感を覚えたその場で掘り下げられるかどうかが分かれ目です。掘り下げに数日かかる体制では、違和感は気のせいとして放置され、問題が表面化したときには対応が大掛かりになっています。

Shopifyレポートを毎日の運営にどう組み込むか

ここからは、前章で見たShopifyレポートの機能を、この2つの視点に沿ってどう使うかを見ていきます。入門編で扱うのは、毎日の定点観測(視点1)と、違和感を覚えたときの2つの掘り下げ方(視点2)です。

日次の定点観測

日次の定点観測に長い時間は不要で、まずは1日5分から始められます。概要ダッシュボードで主要指標を昨日・先週同曜日と比較し、数字の並びに引っかかりがないかを確かめるだけで十分です。概要ダッシュボードには、Shopifyがストアのデータを毎日自動で分析して重要なトレンドを提示する「インサイト」や、主要指標に目標を設定して進捗を追う「ターゲット指標」も表示されます(いずれも詳しくは応用編で扱います。なお、インサイトは過去6か月で週平均10件以上の注文があるストアを対象に毎日生成され、条件を満たすまでは表示されません)。

この5分は違和感を拾うためのルーティンです。異常がないことを確かめて終わりにせず、数字の並びに引っかかりを覚えたら、そのまま次の掘り下げに移ります。

参照:
概要ダッシュボードの使用(Shopifyヘルプセンター)
レポートの指標にターゲットを設定する(Shopifyヘルプセンター)

複数の切り口から変化の要因を特定する

たとえば「昨日の売上が想定より落ち込んでいる」とします。このとき原因の当たりをつけるには、複数の観点から同じ事象を眺めるのが定石です。

  • チャネル別の売上・セッション推移:特定の流入元だけが崩れていないか
  • 商品カテゴリ別・ブランド別の売上推移:全体の落ち込みか、特定カテゴリの落ち込みか
  • ページ単位のセッションとコンバージョン率:特定のランディングページで異変が起きていないか

Shopifyのレポートなら、ディメンションの差し替えとフィルターの追加で、これらの視点の切り替えを同じレポート上ですぐに実行できます。Sidekickに「昨日売上が下がった要因を流入元別に見せて」と聞いてもかまいません。1つの視点で結論を急ぐと見立てを誤りやすいですが、3つの視点を数分で見比べられるなら、原因の候補を短時間で絞り込めます。

複数の切り口で見ること自体は昔から言われてきた分析の基本ですが、それらがShopifyレポートでは同じ画面上の操作だけで行えるため、次のアクションまでの動きをいままで以上に速く進められます。

顧客構成の変化を検知する

売上の総額が保たれていても、その中身が新規偏重に傾いていたら、獲得コストの上昇に対して脆い構造です。逆にリピーター依存が強まっているなら、新規獲得の投資判断を見直すシグナルです。

新規とリピーターの売上構成、そしてコホート分析(初回購入月などでお客様をグループ分けし、その後の再購入行動を追う分析)によるリテンション(継続購入)の推移は、Shopifyの標準レポートで継続的に追えます。コホート分析で「最近獲得した顧客ほど2回目購入率が落ちている」ことが見えたら、次の一手はCRM領域です。特定コホートへのフォローメール、購入後体験の見直し、そして中長期では会員プログラムやモバイルアプリといったリピートの受け皿の整備が選択肢になります。

リピート構造の改善には時間がかかるからこそ、コホートの変化を早期に検知し、小さく手を打ち始める意味があります。分析で見つけた対象を顧客セグメントとして定義し、メール配信やShopify Flowによる自動化につなぐ手順は、応用編で解説する予定です。

関連記事:
【Shopify - ストア分析】RFMに基づくお客様分析とFlowを組み合わせたCRM施策

参照:
顧客レポート:新規 vs リピーター・コホート分析(Shopifyヘルプセンター)

ただし、Shopifyだけでは完結できない分析もある

ここまでShopifyで完結する範囲を述べてきましたが、Shopifyのみでは完結が難しい分析もあります。

ページ内のユーザー行動の定性分析は、外部ツールの領分です。どこまでスクロールされたか、どのボタンで迷ったかといった行動の観察には、ヒートマップ・セッションリプレイのツールが必要です。この用途には無料で導入負荷も低いMicrosoft Clarityをおすすめします。Shopifyのレポートで「どのページのコンバージョン率が落ちているか」を特定し、Clarityで「そのページで何が起きているか」を観察する分業が実用的です。

広告運用の細かな調整は、各広告プラットフォームの管理画面で行うのが基本になります。Shopifyのマーケティングレポートは費用・ROAS(広告費用対効果)・セッションを売上と並べて俯瞰する場として使い、入札やクリエイティブ単位の判断は広告側に任せます。

基盤はShopifyに置き、必要なときだけ外に出す。この順序であれば、ツールを増やしても数字の定義が割れることはありません。

参照:
マーケティングレポート(Shopifyヘルプセンター)

【サマリー】まずはSidekickを活用し、日頃の分析習慣を身につける

本記事の要点を整理します。

  • 現在のShopifyのストア分析は、Sidekickへの日本語での質問と全プランでのカスタムレポート作成に対応し、注文・顧客・商品のデータが同じ基盤にあるため、外部ツールに頼らず管理画面内で分析を完結できる
  • 毎日の見方は、日次の定点観測と、違和感が出た瞬間にその場で掘り下げることの両輪。決まったダッシュボードだけでは、想定していない変化に気づけない
  • 違和感の正体を確かめる基本は「切り口を増やす」「対象を変える」の2つ。ディメンションの差し替えと標準の顧客レポートだけで、どちらも同じ画面上で実行できる
  • 行動の定性分析(Clarity等)と広告運用の細部だけを外部に切り出し、分析の基盤はShopifyに置く

まずは明日の朝、概要ダッシュボードを開いて定点観測から始めてみてください。数字に違和感を覚えたら、放置せずレポートの切り口を変えて確かめてみる。この習慣が定着すると、違和感に気づいてから手を打つまでの時間が、数日から数分に縮みます。

次回:応用編の内容

次回は、Shopify Editions Spring 2026以降のアップデートを踏まえた応用編として、次の4点を取り上げる予定です。

  • Editions Spring 2026で追加された分析機能(インサイト・グラフへの注釈・ターゲット指標・マーケティングデータ統合・ShopifyQLの活用範囲拡大)
  • 毎日の定点観測をSidekickの「スキル」として保存し、いつでも呼び出せる定常レポートにする方法(コピペで使えるプロンプト全文つき)
  • メタフィールドを使い、素材・シリーズ・会員ランクなど自社独自の軸で売上を分解する方法
  • 分析で見つけた対象を顧客セグメントに定義し、メール・Shopify Flow・アプリのプッシュ通知で施策を実行し、検証するところまで管理画面内で完結させる流れ

※本コラムの内容は2026年9月時点の情報に基づいています。Shopifyの機能および仕様は随時更新されるため、実際の導入検討にあたっては公式ドキュメントの最新版をご確認ください。

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Masaki Sugano
株式会社Stack / プロダクトマーケティングマネージャー
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